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趣味の世界を中心に、私taipaが日々思うことを述べていきます。

種田山頭火「行乞記・一草庵日記」

この間書いたことだが、小中学校の国語の教科書すべてに作品が載っているのは、明治以降の俳句では山頭火だけだそうである。日本全国で芭蕉の次に句碑が多く立っているのも山頭火であると思われる。あと100年経ったら、俳句で名前が残っているのは芭蕉、一茶と山頭火だけになるかもしれない。

今回の区切り打ちで松山の一草庵に行ったこともあり、改めて山頭火の作品を読んだ。「行乞記」は昭和5年から托鉢しつつ九州地方を歩いた時の記録で、「一草庵日記」は死の直前まで一草庵の日々の暮らしについて書いた作品である。

「行乞記」を読んで最初に気付くのは、値段の記載がたいへん多いことである。泊まった宿の値段を毎日記録しているだけでなく、酒や食べ物の値段やら何やら、いろいろ書いてある。山頭火というと生活能力がなく、借金まみれの酒飲みというイメージがあるが、カネ勘定にはなかなか細かいのであった。

ふと思ったのは、この時代の宿代である。記事をみると、食事の内容はともかくとして1泊2食で30~40銭くらいが多い。鰯が5銭、大盛りうどんがたったの5銭などと書いてある。現代の値段に置き換えると、「たったの500円」とはならないので、50円とみるのが正しいだろう。鰯だって1尾で買えばそのくらいである。すると、換算レートは現代の1/1000になる。

ところが、「日雇いの日給が男で80銭、女で50銭にしかならない」とも書いてある。1000倍にすると800円と500円、これでは途上国並みの人件費である。当時の日本は国際連盟の常任理事国で途上国とはいえないが、国民の大半が農民で、米・野菜が自給できたことを考えるとそんなものかもしれない。

手許にある資料で調べてみると、昭和10年頃の課税最低年収が1,200円、大卒新人の年収が約1,800円ということだから、1000倍するとそれぞれ120万円、180万円となり、現在の水準に近い数字である。当時、銭湯が2~3銭というから今だと20~30円、米1升(1.8㍑≒1.5kg)18銭は180円。これでは安すぎてお百姓はやっていけないと書いてあるが、そのとおりだろう。

いろいろ勘案すると、1泊2食300~400円で泊まれる安い宿があったと考えるべきなのかもしれない。今ではとてもこんな値段ではやっていけないが、よく探すと現在でも素泊まり1泊1000円くらいの宿がない訳ではないし、当時の木賃宿は本当のボロ家である。建物にカネをかけず、もちろん冷房もネットもなく、風呂すらないところも珍しくなかった(銭湯に行く)。

乞食坊主の山頭火ですら、便所がきたないとか布団が臭くて寝られないと書いているくらいだからその程度の宿で、それでも相部屋で1人米2升の料金が取れれば、宿の経営者が食べていくには十分だったのかもしれない。つまり、それだけ安く提供できたのではなく、それだけ水準の低い宿だったということである。

昨今、ネオリベとかいう人達が、わが国に国際競争力がないのは人件費が高すぎるからだといって、規制緩和と人件費引き下げを図っているが(何が「働き方改革」なんだか)、行き着く先はここである。

カネのない奴は冷暖房なし、不潔なのも我慢しろ、途上国に負けないよう製造業もサービス業も安く提供しろなんてやっていたら、最後はこうなる。生活水準も衛生水準も文化水準も上がっているのだから、人件費・物件費が上がるのは当り前だ。子供の頃に見た冷暖房なしの電車や宿、不潔な道路や駅がまた戻ってくるなら、生きていくのもしんどそうだ。

話は戻って、山頭火の時代はまさに昭和恐慌さなかで、第一次大戦の好景気から一転して不景気となり、物価水準はピーク時の半分近くに落ち込むデフレの時代だった。

国民の大半が農業従事者で、米も野菜も値下がりして農村は大変厳しい状況となった。行乞記にも「二本一銭の食べきれない大根である」の句があるが、二本100円ならともかく、二本10円ではとてもやっていけないということがよく分かる。
 
江戸時代であれば、米や野菜を自給できれば食べていくことはできるのだが、昭和初期になると現金がないと暮らしていけない。税金は全員が納めていた訳ではないだろうが、電気は通じていたので電気代が必要だし、移動すればバス代汽車代はいる。酒や肉・魚はもちろん店で買わなければならない(当時の資料に、農村の現金支出のうち10~20%は酒代が占めていたという統計がある)。

本の中身に入る前に長くなってしまったので、続きはまた改めて。

p.s. 他にも書評いろいろあります。こちら。モバイルフレンドリー対応済。


こうやっていると真面目なようですが、実は酒癖が悪く生活能力がなく、困った「ほいと(乞食)坊主」だったようです。

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